6月27日、第2回の一茶記念館講座を開催しました。
講師は前回に引き続き、矢羽勝幸先生をお招きして、「四季の一茶」という題でご講演いただきました。
先生は2013、2014年に、同タイトルで、信濃毎日新聞で2年間にわたり、1日1句、一茶の俳句をご紹介する連載をされていて、連載をまとめた『四季の一茶』『続四季の一茶』という本も刊行されています。
今回は一茶の俳句を17個のテーマに沿ってご紹介いただきました。うちいくつかをご紹介いたします。
不便(不憫)さよ豆に馴たる鴨鴎(カモメ)
あるがまま、自然なままを尊しとした一茶は、人間に餌付けされた野鳥を見て、自然の姿の方がいいと言っています。
掃溜(はきだめ)に青むねりその柳哉
「ねりそ」は、柳のようなしなやかな木をそのまま縄として使用したものをいいます。縄として使われ、捨てられた柳の木が、ごみ溜めで再び葉を付けている。逆境に負けずしぶとく生きる姿を一茶は賛美しています。
霜がれや鍋の炭かく小傾城(けいせい)
「傾城」は遊女のことです。軽井沢の追分で詠んだ句で、追分では「飯盛女」が有名でした。小が付いているので、まだ一人前になる前の、下働きをしている女の子が、追分を流れている小川で鍋を洗っている様子です。一茶はそれを橋の上からみて、愛情を込めてこの句を詠みました。弱者に向ける優しいまなざしも一茶の特徴です。
日ぐらしや急に明(あかる)き湖(うみ)の方(かた)
いわゆる一茶調だけでなく、蕉風の正統的な秀句も一茶は残しています。この句は野尻湖を詠んだ句で、ヒグラシの声とともに、急に日が射して明るくなった水面を写生しており、どこへ出しても恥ずかしくない素晴らしい句です。
ここでは紹介しきれませんが、個々の俳句を解説しながら、世に知られている有名な俳句では理解しきれない一茶の作風の特徴を判りやすく解説していただきました。