9月6日に開催された第3回の一茶記念館講座。今回は、一茶研究者の作新学院大学教授渡邊弘先生に「一茶晩年の生き方~精神の円熟~」と題してご講演いただきました。
従来、若いころの反芻に過ぎないと評価が低かった一茶の晩年(56歳~65歳)を再評価するという内容で、七番日記の頃に、一茶のなかに、「天地大戯場」の現世で、生きとし生けるものすべてが、みな仲間として押し合いへし合い生きているという視点が芽生えて、晩年に小さな命への優しいまなざしという、私たちの知る一茶調ができていったということを、句作の変化や、季語の増加などの詳細な実例をもとに解説していただきました。
先生は、晩年の一茶の生き方を「素童心」という言葉で表現され、現世の欲を捨てきれない「自力」と、仏にすがる「他力」の中間で、自分自身に素直に生きようとした一茶の精神の成熟を読み取り、一茶の晩年は決して文学的にも不毛ではなかったと評されました。
先生は一茶を研究されて36年、一茶記念館の元館長故清水哲氏と共に北信の一茶資料所蔵家を巡った思い出など、一茶への思いも語っていただき、盛りだくさんの講座となりました。