6月8日、記念すべき令和元年度の第1回一茶記念館講座を開催しました。今回は長野郷土史研究会会長の小林一郎氏に「父小林計一郎の一茶研究」と題してお話いただきました。
一郎氏の父である小林計一郎氏は、長野郷土史研究会を設立して初代会長となった方で、戦後の一茶研究をリードした研究者であるのみならず、善光寺の歴史や、真田一族、川中島合戦の研究など、郷土史のさまざまな分野で大きな業績をあげられました。
そのため、計一郎氏は歴史学者と認識されることが多いのですが、実際には高校の国語教師が本業でした。
計一郎氏が一茶研究へと向かうきっかけは大学時代に国文学者伊藤正雄に師事したことでした。伊藤正雄は明治以来諸家が積み上げてきた一茶研究を仔細漏らさず整理統合、集大成し、戦後一茶研究の出発点となった名著「小林一茶」(昭和17年 三省堂)を著した研究者であり、計一郎氏はその後継者という位置づけになります。
計一郎氏は、地方資料の活用や、統計的手法、筆跡研究など、それまでなかった新しい視点を一茶研究に持ち込み、様々な角度から一茶の実像に迫りました。また、計一郎氏の一茶への理解の根底には、家庭環境の相似と戦争体験があるというお話しもありました。
近代に入って正岡子規が一茶を特筆すべき俳人と評価し、研究が始まってからすでに120年。一茶研究自体が歴史を重ねるなかで、計一郎氏の業績は歴史の一ページとして輝いています。