ねこ館長日記

一茶と善光寺⑦「滝沢柯尺宅跡」

門前農館

雪とけて町いっぱいの子どもかな 浅黄空 文化二年

 一茶の門人のひとりに滝沢柯尺(かせき)がいます。兄は、飯綱町毛野の豪農滝沢可候、弟は高山村紫の久保田家に養子に入った久保田春耕で、いずれも一茶の有力な門人・支援者です。

柯尺は、大門町にうつり住み、善光寺の寺侍として行政手腕を発揮するかたわら、松屋という屋号で酒屋も営んでいました。八十二銀行大門町支店の斜め向かいにある「門前農館」の場所が、宅跡だと言われています。一茶は善光寺を訪れるたびに、この家に顔を出したり宿泊しています。

冒頭の句は、一茶が江戸俳壇引退の記念に出版した本「三韓人」に柯尺の作品として出てきますが、実際には一茶が、自身の有名な俳句「雪とけて村いっぱいの子どもかな」を少し変えて、柯尺のために代作したものです。