一茶記念館では昨年、板画作家恩田秋夫氏(1924~2007)の作品を、ご遺族の恩田通子様より、新たにご70点ご寄贈いただきました。今回の企画展は、これを記念し、また、長年一茶と一茶のふるさとを愛してくださった恩田さんへの感謝の気持ちを込めて開催しております。
恩田氏は大正13年に東京巣鴨に生まれ、東京繊維専門学校を卒業、繊維関係の仕事をしながら、絵画研究所で学びました。その後、昭和31年に武蔵野美術学校西洋画科を卒業、油彩画家を目指しますが、昭和38年から5年間、母校武蔵野美術大学で木版画(板画)の大家 棟方志功の助手を務めたことで、棟方から強い影響を受け、板画制作を始めました。そして、昭和を代表する俳人の一人、加藤楸邨主宰の俳誌「寒雷」の表紙を手がけたことがきっかけとなり、芭蕉、蕪村、一茶などの古典俳句をモチーフとした板画制作に専念するようになりました。
一茶記念館との縁は、昭和41年に、「寒雷」の全国大会で、元館長の故清水哲氏と知り合ったことがきっかけです。その後たびたび信濃町を訪れて、一茶の俳句を題材とした作品を多数遺しました。また、信濃町の町政要覧の表紙も何度も手掛けてくださいました。
やさしい画風で表現された恩田氏の一茶俳句の世界をぜひご覧ください。
野大根も花咲きにけり鳴雲雀
草市と申せば風の吹きにけり
杉の葉を添えて配りし新酒哉