ねこ館長日記

一茶と善光寺⑪「仲見世通り」

仲見世

重箱の銭四五文や夕時雨 八番日記 文政二年

朝霜やしかも子供のお花売 八番日記 文政三年

 現在仲見世通りがある、善光寺仁王門から山門の間は、江戸時代は「堂庭(どうにわ)」と呼ばれていました。お寺の境内という扱いであったため、江戸時代は常設の商店が許されず、仮小屋で営業していました。土産品のみならず、さまざまな日用品も売られ、香具師による興行まで行われていました。

 冒頭の重箱の句には「善光寺門前憐乞食」と前書があり、時雨が降る寒い夕方、銭を満足に得られないホームレスの姿をよんでいます。また、お花売の句は、霜が降りるような寒い朝に、本堂の前でお供えの花を売る子どもの姿です。

 善光寺には、仏の慈悲と参拝客を求めてさまざまな人が集まりました。その中でも特に立場が弱い人々を、一茶は共感をこめて見つめました。